ハワード・ヒューズ

ハワード・ヒューズは、1905年、テキサス州ヒューストンで生まれ。
巨万の富を成した父親の下に生まれ、幼少期は過保護なほどの母親の溺愛を受けて、何不自由なく育つ。
19歳で父が無くなり、父親の会社「ヒューズ・ツール」を継承して 巨万の富を得るが、経営はとりあえず人任せ。

まず彼は、ハリウッドで映画のプロデューサーになる。
背の高くて、金髪、ハンサム、超大金持ちの彼は、あっちこっちで浮名を流し歩いたようだ。
有名女優キャサリン・ヘップバーンやエヴァ・ガードナーとの恋もゴシップを流し、かなりの目立ちたがり。

(左の写真がエバ・ガードナー)

次に航空事業にも進出。
まあ、金持ちの道楽と思いきや、彼は、飛行機を自ら設計して自ら操縦しちゃうという天才だったのだ。

1946年に、飛行機のテスト飛行を自分で行っていた際に墜落、全身火傷を負い、生死の境を彷徨う。
この後、彼の容貌や性格までもが激変し、だんだん異常性を帯びてくるようになっていく。

しかしながら、彼の起業家としての才能は見事なもので、もう、それは、ほとんど天才の域!
あちこちを買収していくたびに、どんどん儲かってしまう!常に、桁外れに大きなことにチャレンジし続け、彼の資産は最終的には当時の金額で10億ドルを超えていたようだ。

1940年頃から、だんだん彼の「異常潔癖症」が悪化。細菌恐怖症のあまり一歩も外に出なくなり、誰にも会わず、薬も飲まず治療も受けなくなって・・・完全に、強迫観念に支配されていく。
彼は、自分の住居用に買い取ったホテルの最上階を完全無菌ルームにし、そこから電話でビジネスの指示を出す生活だった。
人を信用しなかったのか、どんな些細なことでも、ビジネスに関することは、すべて自分で行わなければ気がすまなかったようだ。

1966年、ヒューズは、ラスベガスの「デザート・イン」 というホテルに移り、そこの最上階に篭る。
ゲームを一切せずに篭ってばかりいる為、ホテル側からクレームを出された事がきっかけとなり・・彼は1320万ドルで買収しちゃったのだ!
どうも、これがきっかけとなり、彼は、カジノ経営は大きな税金対策に有利、と知ることとなった。それ以降、ラスベガスで、がんがん買収を始める。

その結果、ホテルだけでなく、アラモ航空会社、ノース・ラスベガス空港や鉱山や牧場など、ラスベガスの5分の1を手に入れてしまったようだ。
これに、あわてたのが、州政府。

1969年に、「カジノ・ライセンスの取得は主要株主の審査たけで良い」という法案に改正することになる。
法案を簡素化させることによって、上場大企業も投資できるようにさせたわけなのだ。
(つまり、たった一人の男にのっとられたくなかったからだろう。)

そのおかげで、ハイアット・ヒルトン、ラマダ、ホリデー・イン、MGMなどが、莫大な資金をラスベガスに投資できる事となり、ラスベガスはマフィアの手から企業の手に移行していくことになったのだ。
すべては、ヒューズの買収がきっかけになった。

その後ヒューズは、数ヶ所海外に移り住み、1976年4月5日、70歳で自家用機の中で亡くなる。
しかし、それは・・かなり異常な死に方だった。
身長は10センチも縮んでしまい、誰にも見分けがつかないため、FBIを呼んで指紋鑑定したそうだ。

ホテルの専用のコックが作る料理も信用できず、食事といえば、缶詰から直接スープを飲むだけ。カーテンを締め切り太陽にも当らず、まずます病気は悪化していき、しかも、20年余りも人に会ってなかったため、誰も彼がわからなかったのだ。
派手好きだったわりには、人と会うことを嫌い、写真を取られることも嫌ったので彼の写真も、ほとんど残っていない。
ビジネスの天才でありながら、異常な人であり、多くの謎の部分を残している。

映画「アビエイター」は、飛行機に情熱をかけるハワード・ヒューズ自身の映画、また「タッカー」の中にも登場していたはずだ。

彼が一番最初に買収した「デザート・イン」は、現在でも、1997年に改装されて健在。
ここは、エレガントな5つ星クラスの高級ホテルをイメージして建てられたようで、流行のテーマ型リゾートホテルとはちょっと違った趣きのようだ。つまり、当時は「最もラスベガスらしさのないホテル」として知られたホテル。

ヒューズは、1967年にサンズホテルを買収して「ラスベガスで一番巨大なホテル」を建てようとしていたようだ。
しかし、実現させずに亡くなって23年後、ようやくサンズホテル跡地に、巨大なホテルが建てられた。
奇しくも、当時のラスベガスで一番、巨大な6.000室を持つホテル「ベネチアン」が、まさに、それ!

ナイスルッキングで、超大金持ちで、天才で、大きく世の中を変えた男、何十年も人に会わず、細菌におびえ、ボロボロにやせ細って死んだ男・・・彼の人生が幸せだったか、不幸だったのかは、もちろん、彼にしかわからない。

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